daretachi『マシーン日記』上演企画のblog   

2012年7月12日-16日に松尾スズキ作『マシーン日記』の上演を行うdaretachiのブログです。

daretachi座談会 最終回 & フォトギャラリー

daretachi『マシーン日記』が終了して1週間。  
5人が公演を振り返ります。
相変わらずのシリアストークあり、脱線トークあり。
当ブログ最後の記事です。
舞台写真と共にお楽しみ下さい。
 
写真撮影:三浦麻旅子

 

 

f:id:daretachi2012:20120711162951j:plain

 

  松尾スズキ作品を演じて/演出して

 

川口  (演出の)思惑自体はよかったと思います。リアリズム演技で感情を繋いでいって、ちゃんと戯曲として読み解くというやり方はよかった。

ただ、構造として、テーマが拡散していてひとつの物語に収束していかないっていう戯曲なので、(自身が作っていく上での)そこの見通しは甘かったなと。

でも、松尾作品はおそらく戯曲を大幅にカットしてでもリアリズム演技でやらない限り、意味がないだろうという確信も得ました。

 

浅倉 うーん、難しかったね。リアリズム演技って、俺の解釈では真面目にやるってことなんだけど、その上で笑いに結びつけるには、俺は器じゃなかったな。

あと、狂気という視点でお客さんは見るんだなと。俺は、アキトシは狂人とはあまり捉えていなくて、あくまでも大真面目であるという。狂気の形は人それぞれなんだなっていうのが面白かったな。

 

古市 (登場人物)4人がヘンな人としてお客さんに受け取られたっていう印象が大きかったね。変わってはいても自分や自分の周りにもあり得る、って思ってもらえたらよかったんだけどそこまでいけなかったかなあ。

 

日ヶ久保 台詞もあるんじゃないかな。どんなにリアリズムで演っても、おもしろいこと喋るから。

 

川口 お客さんの受け取り方や楽しみ方も含めてすごくいい体験になりましたね。次に進むためのよい機会になった。

 

f:id:daretachi2012:20120711162953j:plain

 

神保 やってみて、予想していたよりも疲れるというか、消耗しましたね。でも戯曲を素直に演ったらああなっちゃったんだよね。

 

川口 それって、戯画的な演技に向かわずにどうにか感情をすべて繋げて動かさないといけなかったからじゃないですかね。

 

神保 そうね。ひとつのシーンの中で(演技を)飛躍させないと届かないなってところが結構あって。丁寧に感情を追っていったら間に合わないところでボーンと飛ばなきゃいけないっていうのは思ったね。

 

川口 うん。

 

神保 あと、松尾作品をご本人の演出とは違う形でやって、でも少なくとも作者の顔に泥は塗らないような仕上がりにできたのはよかったと思いますね。

 

f:id:daretachi2012:20120710172838j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120711135538j:plain

 

  本番中のハプニング・ミス

 

神保 初日に鎖の足枷が外れたのよ。 

 

古市 あったねえ。

 

川口 ええ!! 全然気付かなかったです。

 

神保 気付いてない人もいると思うよ。地図を壁に貼って台からポンと飛び降りたらバラっと外れて。「ああっ!!」って。で、普通に喋り続けながら付け直した(笑)。

 

川口 あと、初日は幕の開閉がうまくいかず、お客様には申し訳なかったです。

ただあれは、初日で、しかもスタッフもいないから、っていう訳ではなく、準備万全の体制で臨んだら初めて起こったという。あんまり芝居が見えづらかったら止めようと思ってたんですけど。本当に申し訳なかったです。

 

f:id:daretachi2012:20120711163924j:plain

 

日ヶ久保 あとプーさん。

 

浅倉 あれな。幕の前で芝居して、引っ込んだらなんか電子音が聞こえて、「あれ?」って思って。 

 

古市 最初はお客さんかと思ったけど、「幕の裏から聞こえる?」って。

 

浅倉 (音は)止んだんだけどしばらくしたらまた鳴って。で、音の出処を辿ったの。そしたらどうも舞台セットの、台の中から聞こえてるらしい。で探ったらプーさんのぬいぐるみがある。「……お前かあっ!!」って、ぬいぐるみ掴んでダッシュで裏口に叩き出した。

 

日ヶ久保 あのぬいぐるみ持ってきたの私で。もう壊れてると思ったんですよ。そしたら勝手に鳴りだしたみたいで。最初、携帯が鳴ってると思って、「ここで鳴る!?」って思いながら芝居してて。「でもなんか懐かしいメロディ……」って(笑)。

 

一同 (笑)

 

浅倉 でも音を止める余裕まではなかったからプーさん裏口でずっと鳴ってて、近隣の住民が非常に気味悪がったと。

 

日ヶ久保 本当に申し訳なかったです。

 

f:id:daretachi2012:20120710184542j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120711155541j:plain

 

  ナレーション

 

川口 戯曲ではスライドで表示されている文章なんですけど、それを役者さんに読んでもらって録音して流しました。意図は、映像を使うのが大変だったというのもありますけど、役者本人の喋ってる声でやりたかったのが第一でした。

更に、戯曲に書かれているよりも数を増やして、そうしたことで格段に芝居が見やすくなった。それがよかったのか悪かったのかはいまいちわからないですけれど。

 

神保 ナレーション気に入った。もっとやっていきたい。ナレーション芝居。

 

浅倉 難しかった。録音したの聞いたら恥ずかしくてしょうがない。

 

古市 聞いたらもう、「うわあっ!」って。

 

神保 ケイコが体位を喋っていくの面白かったですよ。

 

浅倉 技の名前みたいになっててね。

 

f:id:daretachi2012:20120711165048j:plain

 

神保 あと、ナレーションではないですけど、福島ハルヲ先生の声を演ってくれたピーチャム・カンパニーの八重柏泰士くん、ありがとう。面白かった。

 

日ヶ久保 マツザワ君の声を演ってくれた現代芸術家の村上裕くん、ありがとう。キミは役者だ(笑)。

 

神保 村上くん、稽古場での仮録音の時点ですごく面白かったのに、本番用に録り直したら上手くなってたものね。

 

川口 普通に上手くなってましたね。

 

f:id:daretachi2012:20120711160725j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120711150559j:plain

 

  アトリエしゅらでの手作り公演

 

川口 跡見凡さん、ありがとうございました。

 

一同 ありがとうございました。

 

川口 跡見さんというのはアトリエしゅらを所有する劇団修羅の看板俳優さんで、今回本当に助けて頂いて。

 

浅倉 そこらの小劇場のスタッフは跡見さんを見習ってほしい! 古き良き演劇人の矜持や生き方を見せられましたね。

 

川口 言っておきますけど、ご好意で特別にアトリエを使わせて頂いているので他の方は借りられませんよ(笑)。

 

f:id:daretachi2012:20120711171715j:plain

 

浅倉 でもホントいい小屋だと思うよ。『マシーン日記』の上演にしゅらを選んだっていうのは成功だったね。

 

古市 よかったよね。

 

日ヶ久保 (通常のしゅらの状態から)そんなに手を加えていないもんね。壁をつけたくらいで。

 

川口 そうですね。すごいありがたかったのは、稽古してて「ドアがほしいですね」って言ったらドアが出てきたことですね。

 

浅倉 事務所用のドア引っぺがしちゃったもんね。

 

古市 たまにさ、跡見さんがすぐ裏にいること忘れてて話し合ってたら、聞いててくれて「あるよ~」って出てきてね。

 

神保 しゅらでなかったら初日までに間に合わなかったよね。

 

日ヶ久保 そうだよねえ。

 

川口 すごく助かりました。本当に。

 

f:id:daretachi2012:20120710184227j:plain

 

川口 最初は舞台セットをコの字型にしようと思ってたんだけど変更して、で、しゅらに入ったらうまく合った。窓も作ったわけではなくて、元から壁のあの部分が開いてたんですよね。

 

浅倉 これを使わない手はないぞ! ってね。

 

川口 みんな当たり前のように窓として使ってるから、最初はどうかなって思って見てたんですけど、これはこれでいいかなって思って(笑)。

ミチオが寝てる台もしゅらで稽古するようになって、「ここで寝てみましょう」ってやったらあの方がスムーズにいきましたね。

 

f:id:daretachi2012:20120711154617j:plain

 

浅倉 そしてコーラまみれにしたねえ。

 

神保 俺がコーラを吹き出させるのがだんだんうまくなっちゃって、あまりに勢い良く吹き出るもんだから自分を越してほとんど後ろの壁にかかっちゃったりして。

 

日ヶ久保 裏にいてすごいシュワシュワシュワー!! って音がした(笑)。

 

f:id:daretachi2012:20120710173157j:plain

 

浅倉 役者だけで捌くにはあの小道具の量は大変だったね。

 

古市 私は小道具は楽だったから。みんな大変だったと思うけど。

 

神保 普段だったら開演前には神経質に何度も小道具セッティングを確認するのに、今回は「もういいや」ってなっちゃってた。

 

一同 (笑)

 

浅倉 そういうところにもミチオのだらしなさが染み付いちゃったか。

 

川口 部屋のどっかにあるだろう、と。

 

f:id:daretachi2012:20120711173500j:plain

 

川口 村上(裕)くんにお世話になりましたね。切られた足を作ってくれて、稽古場から音響やってくれて。

 

古市 早い段階から音響があるってすごいありがたかった。

 

川口 音響をすごいやってくれてるから、自分も照明しっかりやらないとなあ、って思って。ちゃんとやりましたよ。本当はもっと暑そうな明かりにしたかったんですけど。

 

神保 ホントに照明で暑かったんだけど。

 

古市 暑さすごかったもんねー、ホントに。汗びっしょびしょだもん。

 

神保 後ろの窓から顔出してゲロ吐くところで、壁のすぐ裏の、目と鼻の先に照明があって。顔出しながら「暑い暑い」ってつぶやいてたら、本番3日目から浅倉さんが裏から飲み物飲ませてくれてた。

 

一同 (笑)。

 

f:id:daretachi2012:20120711155639j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120710171505j:plain

 

  1週間経って

 

神保 ちょうど(公演が終わって)1週間です、今日。

 

日ヶ久保 ずっと前のことみたい。

 

浅倉 半年かけて準備したのにあっという間だったね。

 

古市 あっという間だったね。始まっちゃったら早かった。

 

f:id:daretachi2012:20120711163402j:plain

 

古市 まだ痛いです、体が。

 

日ヶ久保 私めっちゃ回復早い。あんな痣だらけでメイクいらずみたいだったのにもう脚出せる。この夏は無理だと思ってたのに。

 

神保 やってる最中は怒涛だったけど、楽しかったんだな、って思いましたね。

 

浅倉 終わったら即ガクッってくるかと思ってたけどそうでもなかったね。でも今、キてるね。

 

f:id:daretachi2012:20120711173326j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120711174226j:plain

 

  daretachiについて

 

神保 現代作家の戯曲をやるっていう枠組みにはちょうどいい感じだったと思いますね。この企画規模とかチーム名をつくってやったっていうのは。

 

川口 みんな、自分たちの解釈で現代作家の作品をもっと果敢にやればいいのに、と思いますね。

 

日ヶ久保 既成の戯曲でも面白いと思ったらやればいいのにね。

 

浅倉 今同じ時代を生きている作家の作品をやるには、オリジナルとは違う何かを明確に打ち出せなければ上演しちゃダメだと思う。そういう流れはあるんだけどまだ小さいよね。

 

川口 この規模で出来てよかったですね。もっと人員があったらいろんなこと考えちゃっただろうなと。でもそれなりのクオリティは維持したと思います。

 

浅倉 大変だったけど、裏のことまですべて自分たちでやるのは大事だったと思うよ。もちろんいろんな人たちに助けてもらったけどね。

 

日ヶ久保 やってよかった。

 

f:id:daretachi2012:20120711173633j:plain

 

日ヶ久保 そういや、おならどうだったんだろう。

 

古市 ああ、おならどうだったの!? (古市・日ヶ久保の二人が舞台裏から口を使ってミチオのおなら音を出していた)

 

川口 効果音を使うより僕はあの方がよかったんで。

 

神保 俺と浅倉さんの立ち位置が逆になった時があって。浅倉さんがおならしたみたいになったことがあった(笑)。

 

浅倉 おならの音がしてから気付いた(笑)。

 

日ヶ久保 スタッフがいないっていうのは知ってても、私たちが裏でおならの音をだしてるてところにまで想いを馳せる人はいないだろうね(笑)。

 

川口 裏にいる人全員での総力戦ですもんね(笑)。

 

古市 他にいないから(笑)。

 

日ヶ久保 うまく音が出た日とか、二人で顔見合わせてキャッキャッって。

 

川口 ということで、観に来て頂いたみなさん、ありがとうございました。

 

一同 ありがとうございました。

 

f:id:daretachi2012:20120710173743j:plain

 

f:id:daretachi2012:20120711152649j:plain