daretachi座談会 ⅩⅠ 「6本指」
川口 「6本指」。
浅倉 有名なのは豊臣秀吉だよね。資料にも残ってるし、一番有名な肖像画にも、笏みたいなの持ってる手をよくみると親指以外に5本並んでるの。昔は6本指ってよくいたらしいの。ていうのは近親婚が多かったからなのね。血縁の近い者同士が結婚すると、そういう子が生まれる確率が高いらしいんだって。
神保 なるほど。
浅倉 ということはだ、アキトシ、ミチオの兄弟の両親は親戚だったのか? っていう。
神保 出てこないもんね、お母さんの話は。
浅倉 オヤジは結構ヤバい感じがするよね。1年間閉じ込めてるし。
神保 オヤジのことを喋る時に誰かをイメージしなきゃならないから、六平直政さんにしちゃった。自分の知ってる人の中では一番オヤジにいいなと思って、勝手に。
日ヶ久保 ふふふ。
浅倉 怖いよー。
神保 お母さんは死んだのか、出て行っちゃったのか。
浅倉 どっちだろうね。
神保 アキトシが6本指であることが作品中で一番作用するのは、放映されなかったっていうことじゃない? そのためにそういう設定にしたのかしら。
川口 兄っていう立場を引き受けようとしていることの表れではあると思うんですよね、その指を「兄指」と名付けることで。
神保 クライマックスに向けて兄指がどんどん疼いてるじゃないですか。ラストでは疼いてると思いますか?
浅倉 そこではなんか人としてのラインをね、越えちゃってる気がするのね。だから兄指とかはどうでもいいんじゃないかな。
神保 疼くということに、この人たちの中だけで分かってる何かがあるってことなんだろうね。
浅倉 家族に関してのことだよね。だいたい。
川口 それがうまくいっていない。
浅倉 よくわかんないね。意思で動くのかな、ああいう指って。
川口 動かないと思いますけどね。肉の塊みたいなものだと。
古市 指に成りきらなかったもの、みたいな。
神保 アキトシがいつも軍手しているのはなんでですかね。
浅倉 けっこう気にしてるのかね。この指のせいだ、みたいな。「(指をさすって)疼くぜ! ああ、虚無!」って。